| ゴールネット株式会社 代表取締役社長 杉山 剛太 |
× | メディア評論家 正木鞆彦 |
杉山:先生、手に持っているのは何ですか?
正木:デジカメだよ。毎日10枚くらい写真を取っているんだ。最近はシルバーシートに座っている若者の写真を撮るのが趣味で。どんな顔してシルバーシートに座っているのかを観察していると、絶望的なんだよね。
杉山:どういうことですか?
正木:全く席を譲る感じがしない(笑)世代間のコミュニケーションが全くない、自分以外拒絶しているというか、無関心というか・・・
杉山:22歳以下の世代は「モバイル世代」というそうです。自分の身近の世界としかコミュニケーションが取れない世代なのかもしれませんね。
正木:「気が利かない」んだよね。鈍感になったというか。自分一人で生きていける、利害関係のない人と関わりたくないって事なんだろうね。
杉山:私、SNS(ソーシャルネットワークサービス)に参加しているんですが、そこはゆるい人間関係なんですよ。共通の趣味とか共通の友人だけで成り立つ、先生の言う利害関係のある人たちだけの世界。だからはやっているのかなぁ。ところで、先生はその写真をどうするんですか?
正木:実は、出版社に掛け合って写真集を出そうと考えているだよ。
杉山:へぇ〜。面白い企画ですね。さすが、「monoマガジン」の選考委員長ですね、発想力が違う。
正木:企画っていうのは、立てた人のオリジナリティだと思うんだよ。「日本初」とか「世界初」とか。単なる思い付きじゃないんだよね。
杉山:「シルバーシートに座っている若者の写真集」は確かに日本初ですね(笑)
正木:「企画」と「思いつき」の違いっていうのは、結局他人を動かして実行できるかどうかの違い。企画の最大の障壁って何だと思う?
杉山:何でしょう・・・
正木:社内の人間。一番近い人なんだよ。現状にしがみついている人は社内、身近な人に多い。こういう人が「企画」の妨げになるんだよ。
杉山:なるほど。確かに、現状にしがみついていたら日本初にはならないですね。
◆ コンサルタントの後ろには、何万人もの消費者がいる
市場でかき集めてクライアントを納得させること
正木:たとえば、クライアントなんかもそう。発注したクライアントの担当者そのものが、障害になったりする。なぜ新しいことをやりたがらないのか?発注者は「売り手」の発想しかないんだよね。買い手にとって意味があるかを考えていない。だから今までの手法や、自分たちの考えが一番良いと思っている。現状の自分たちの発想にしがみついちゃっている。
杉山:確か、スバルが初めて家庭用自家用車を作ったときの話にありましたね。
正木:そうそう。スバルが小型車以外で初めて作った自家用車が、FF(前輪駆動)の車で、後部座席がフラットになっていることが売りだったんだよ。「後部座席でパターをして、平らなことをアピールしたら」なんてクライアントが言ったんだけど、色々調べてみると当時1台の乗車率が1.3人。後部座席に乗ることなんてめったに無いんだよね。だからそれを売りにするのはおかしい、ってクライアントに言ったら、クビになっちゃった(笑)
杉山:でも、後部座席をフラットにすることはデータから見ると消費者にはどうでもいいことなんですよね。
正木:その通り。でも、クライアントは自分たちの考えが正しいと思っているから反対意見を言った私を切ったんだよね。
杉山:多くのクリエーターもコンサルタントも、クライアントの意見を尊重しすぎかもしれません。お金を払っているのはクライアントだし。でも、本当のコンサルタントなら先生のように、正しいと思ったらクライアントとケンカしないと(笑)
正木:確かにクライアントは大事だけど、クリエーターであり、コンサルタントである私の後ろには何万人もの消費者がいるんだよ。消費者の声を、市場でかき集めてクライアントを納得させることが私たちの仕事なんだよね。新しいことをする勇気。これが必要なんじゃないかな。
◆ コンサルタントは「価値の変換機」
「作り手側の価値」を「買い手側の価値」に変える事。
杉山:マイルドセブンの話なんか、まさしくその典型ですよね。
正木:私が手伝った企画の中でも最高傑作じゃないかな。当時、タバコのパッケージはオレンジとか、赤とか暖色って言うのが相場だったんだ。でもね、私は妻とか娘にいつも言われていたんだよ、「お父さんの部屋はくさいし汚い」って。
そこで考えたんだ、家族に拒絶されない色ってなんだろうって。当時は「白いクラウン」とか「白いファンデーション」がはやっていて、白いパッケージなんて良いんじゃないか、と思ったんだよね。
杉山:なるほど。
正木:当然、クライアントは大反対だよ。白いパッケージのタバコなんてないし売れるわけないって。でも、静岡県でテストマーケティングをしたら過去最高の売上になったんだ。
杉山:今では、白いパッケージのタバコは主流ですものね。ということは、コンサルタントは企画をするときはいかにオリジナルであるか、それをクライアントに納得させられるか。これが重要なんですね。
正木:そう。コンサルタントの仕事は「価値の転換機」。「作り手側の価値」を「買い手側の価値」に変える事。買い手の意識の代弁者なんだよね。だから、私が仕事をするときはクライアントの商品を購入する。「買い手」になっちゃうんだよ。そうすると色々見えてくる。
杉山:私もお客様の視線とか、行動パターンを分析してますけど、自ら「顧客」になるって発想は面白いですね。
正木:クライアントは、「業者か客か」という視点でしか見てないんだよね。「パートナー」って感覚がない。コンサルタントは「パートナー」にならなきゃいけない。でも、お金をもらっているとどうしても業者っていうか弱い立場っていう見られ方をするから、私は商品を購入して「客」になっちゃうんだ。そうすれば、何万人ものお客様の代弁者になれる。
◆ コンサルタントに必要なこと
情報や知識のありかを知っていること。
杉山:先生は「ミスターデジタル」と長年言われて、様々なコンサルティングを経験されていますが、コンサルタントに一番必要なことって何でしょうか?
正木:雑多な情報を理屈で整理する、整理能力じゃないかな。何も専門職である必要はない。情報や知識のありかを知っていること。「そのことなら○○さんを紹介しますよ」とか、この人に聞けば何でもなるという便利な存在。
杉山:コンサルタントが全部を出来る必要は無いんですね。
正木:その通り。ただし、クライアントの質問や要望に答えられるだけのネットワークが必要。タンスみたいなものだね。小さな引き出しにいろいろな情報があって、どこに何があるかを整理して理屈で説明できることが重要。知識じゃないんだよ、いろんなケースを知っていること。事例をたくさん持っていること。データベースみたいなものだね。
杉山:ということは、正木先生を知っている私は十分コンサルタントですね。クライアントから知らないことを聞かれても、先生を紹介すればいい(笑)
WEBコンサルタントをしていますが、先生のお話でコンサルタントの仕事が明確になりました。どうもありがとうございました。
正木:また、こういう機会を作りましょう。ありがとうございました。
| PROFILE |
| ■ 正木 鞆彦 慶応義塾大学卒業、文化放送等を経て、NTTテレマーケティング初代代表取締役を歴任(現顧問)。 現在、メディア評論家、東京女子大講師。 |










